プロダクションノート

  • 企画の成り立ちLINK
  • オリジナリティあふれる
    シナリオ作りLINK
  • 人気、実力を兼ね備えた
    豪華キャスティングが実現LINK
  • スタッフのこだわりが詰まった
    “フニクリフニクラ”LINK
  • 有村架純×塚原監督 −−−
    2人の間に芽生えた絶対的な信頼感LINK
  • 個性豊かなキャスト陣が魅せる
    感動のケミストリーLINK
  • 神秘的な水中シーンを経て、
    クランクアップLINK
  • 主題歌はYUKIの書き下ろし楽曲LINK
  • 企画の成り立ち

    脚本家・舞台演出家として活動する川口俊和による小説家デビュー作「コーヒーが冷めないうちに」が発売されたのは2015年12月。発売時に本作を読んでいたプロデューサーの平野隆と岡田有正はそのハートフルで奥深い物語に感銘を受け、すぐに映画化に向けて動き出す。川口は自作の映画化を長年夢見ていたとのことで、快く了承。そして2017年に続編となる「この嘘がばれないうちに」が発売され、その要素も交えた映画化を検討。映画版の主人公を【時田数】にすることを決定し、オムニバス形式の物語に1本の太い筋を通していくことを念頭に、シナリオ開発の準備が進められていく。同時に「この繊細な人間ドラマを撮れる監督は誰か」という議論の中で、数多くの連続ドラマでその手腕を発揮してきた塚原あゆ子の名前が真っ先に浮上。「メインキャラクターの多くは女性なので、女性監督にお願いしたいという気持ちが当初からありました」(P)。オファーを受けた塚原監督は「最初は“なんで私に?”と思いました(笑)」と率直な思いを口にする。「ただ4話で1本になっているような物語で、ある意味連ドラっぽいなと。そこで私がやってきたことが活かせるのではないかと思い、お受けしました」。

  • オリジナリティあふれるシナリオ作り

    塚原監督も加わり、脚本家の奥寺佐渡子と共に本格的な脚本開発が始まる。原作に最大のリスペクトを払いながらも、あえて原作とは異なる設定に変更した点も。「一番意識したのは女性だけでなく、男性も楽しめて共感できる作品にしようということ。そこで高竹と房木の夫婦の設定を、原作とは男女逆にしてみようということになったんです。奥寺さんの、妻や母・大人の女性のセリフはいつも秀逸で、今回もそれは存分に活かされているんですが、(芝居を)受ける側の男性のセリフもとても柔らかくて素敵なものをお書きになる。妻・高竹のセリフを受けての夫・房木のセリフは、本当に素晴らしいなと思います」(監督)。また数を主人公に据えることで、唯一の映画オリジナルキャラクターとして大学生の新谷が登場。「原作の続編「この嘘がばれないうちに」は7年後の設定なので、数には一応彼氏がいるらしいという描写はあります。映画ではさらにその設定に踏み込んで、心を閉ざした数の心をノックする人が現れるということで物語がドライブしていく。最終的には数の成長物語として描けるよう、新谷というキャラクターを加えました」(P)
    そして原作ファンなら誰もが気になるのが、過去へタイムスリップをする時の映像描写。当初、奥寺は脚本に「時のトンネルめいたもの」とだけ表記していたが、監督のアイディアで「水中に落ちる」という新たな設定が生まれた。「最初からタイムスリップの映像はどうしようというのが一番悩んだところでした。誰もが楽しめるファンタジーとしての表現にしたかったのと、あとはあまりCGに頼りたくなかったんです。架空感とリアル感の線引きみたいなところが一番センシティブでした。初期の段階から水に落ちるというイメージがなんとなくあったのは、その場所が喫茶店だったからだと思います。喫茶店でのタイムスリップということに意味を持たせないとダメだなと思って、コーヒー、湯気、水……という連想だったんです」(監督)。

  • 人気、実力を兼ね備えた
    豪華キャスティングが実現

    主人公が数に決まった時点で、製作陣は有村架純にオファー。大ヒット映画『ビリギャル』(2015年)で仕事をしたことがあった有村の女優としての成長、ポテンシャルを目の当たりにしていたので、一見物静かな数の中に潜む強さと葛藤を有村なら演じ切れるに違いないと確信していた。有村サイドも快諾。映画としては決して登場人物が多くはない本作だけに、その他のキャスティングも慎重かつ贅沢に進められていく。「この人にしかできないお芝居ということはもちろん、この人とこの人がガチンコでぶつかったら楽しそう! という観点でキャスティングを考えていきました」(監督)。
    波瑠&林遣都の元気な幼なじみコンビ、吉田羊&松本若菜の確執のある美人姉妹、薬師丸ひろ子&松重豊のワケあり夫婦。そんな賑やかな常連客たちを見守るマスターに深水元基、数に想いを寄せる大学生に伊藤健太郎、そして“ある席”に座り続ける謎の女に石田ゆり子。全員が多忙を極めるキャスト陣だったため、スケジュール調整は難航したが、「塚原さんの初監督作品だからということで、皆さんにご快諾いただけたのは大きかったです」(P)。その言葉を裏付けるがごとく、キャストのクランクアップ時のコメントでは、すべてのキャストから塚原監督への賛辞が語られた。

  • スタッフのこだわりが詰まった
    “フニクリフニクラ”

    撮影の8割を占めたのが、数たちが働く喫茶店“フニクリフニクラ”。東宝スタジオに作られたこのセットは、キャスト陣が感嘆の声をあげるほど細部まで緻密に作り込まれ、かつ遊び心もいっぱい! 「全体のルックとして暗いイメージにすることは避けたかったので、極力明るい店内のイメージは意識してもらいました」(P)。コースター、コーヒー回数券、入口のマットなどはすべて美術部が制作したオリジナルグッズ。中には“フニクリフニクラ”のスタンプまであり、それに気付いた有村が自分のメモ帳にこっそり押しているなんて一幕も。物語のほとんどがこの喫茶店の中で展開していくので「一番心がけたのは、観客を飽きさせないこと。タイムスリップした先も現在もお店の装飾はほぼ変わらないので、軒並み変化がつけづらいんです」(監督)。そこで監督が中心となって発案したのが、タイムスリップした先での四季の移り変わり。実は店に飾られている額縁付きの絵画や壁の色なども、タイムスリップした時期の季節によって鮮やかに変化しているのだ。「春なら桜をイメージするピンク、夏なら新緑の緑など、その季節を想起する風景写真、風景画を美術さんには集めてもらいました。衣装に関しても実は皆さん四季それぞれの色を着ていて、羊さんは秋に飛んでいくのでオレンジや黄色系、薬師丸さん、松重さんは春に飛んでいくのでピンク系など……。よく見ると照明もその季節によって影の落とし方を変えていたりと、スタッフの努力の結晶ではありますが、基本は観客には気付いてもらわなくてもいいんです(笑)。ただそれらをすることで、なんとなく違った世界に行った感が出るといいなと思っています」(監督)。

  • 有村架純×塚原監督 ――
    2人の間に芽生えた絶対的な信頼感

    自身にとって初の映画作品となったが「映画とドラマってすごく違うのかなと思って入ったんですが、ほとんど変わりはなかったです」と淡々と語る監督。有村いわく「監督はすごく男前。いい悪いがはっきりしていてかっこいい。惚れる女性です」という演出は、キャスト陣からも絶大な信頼を得ていた。キャストと必ず直接言葉をかわし、時には自ら実演もまじえながら演出意図を伝えていくスタイル。「同時にしゃべってしまう芝居が好き」と言う彼女らしくリアルな会話のテンポを大事にし、場合によってはアドリブも大歓迎。キャストの出すアイディアには真剣に耳を傾け、採用することも多々という柔軟性は、自然とキャストのテンションを上げていく。そんな監督だが、主演の有村について「役者になるべくしてなった人なんだなと思いました」と絶賛を惜しまない。「核のある、非常に骨太な役者さんで、脚本の読み方も力強い。数は決して自己主張が強いタイプの役ではないのに、彼女がそこにいることでこの世界が回っている感じがちゃんとするんです。何もしていなくても気付くと彼女を見てしまうし絶対に埋没しないので、自然と彼女のカットを入れたくなる。これは主演をやる人の天賦の才だと思うし、本当に稀有な役者さんですね」(監督)。
    原作では「バレエのよう」と表現されている数の特別なコーヒーの淹れ方についても、2人で熱心に話し合いを重ねた。「実際バレエっぽくやったら笑っちゃいますけど(笑)、神々しい感じ、この行為を神格化していく必要があることは2人とも認識していました。ただ、変にリアリティをもたせるというよりも、お子さんからご年配の方まで分かりやすい“エンタメ感”は常に意識しましたね」(監督)。

  • 個性豊かなキャスト陣が魅せる
    感動のケミストリー

    各エピソードでそれぞれのキャスト陣の見せ場が用意されている本作。まずは波瑠と林遣都が演じる“幼なじみカップル”のパートは撮影も賑やかで、共演経験のある2人だからこそ成立したテンポの速い掛け合いがお見事! 「普通は相手の芝居を見て自分の芝居をやるっていう関係性に縮めるまでに時間がかかるんですけど、おふたりはすぐにあったまる。あのふたりじゃないとあの“幼なじみ感”は出なかったと思います」(監督)。何かと二美子(波瑠)の揚げ足をとって挑発する五郎(林遣都)の演技には、監督も「腹立つ~!」と笑顔。終始前のめりで、“ある席”に座るなり「はいっ、1週間前!」と叫ぶ波瑠のコメディエンヌぶりが発揮されるシーンでは、「OK! かわいい!」と思わず心の声が漏れる監督の姿も。
    対してぐっと大人の穏やかな雰囲気が魅力の、高竹(薬師丸ひろ子)&房木(松重豊)夫妻パート。高竹の少女のような無邪気さが垣間見られる、「コーヒーにミルクを垂らしその綺麗な模様を眺めるのが好き」というキャラクターも、薬師丸が現場で発案したものだ。自分を忘れてしまった妻を、優しく見守る房木の愛ある目線。過去に戻った房木と、まだ元気だった高竹がテーブルを挟んで対峙するシーンは、2台のカメラで極力カットを割らずに撮影された。「過去に飛んだ先のお芝居は、役者さんもなるべく一連で撮って欲しいと求めていたと思うし、スタッフもそうあるべきだろうという意識はありました。おふたりがいつ泣くかっていうのは毎回違ったので、本当にお芝居って生き物だなと感じましたね」。モニターを見つめる監督の目からも、自然と大粒の涙があふれていた。

    現場のムードメーカー的存在だった吉田羊は、演じる平井同様明るい気遣いの人。吉田のシーンはその場で突発的に生まれたものが多いのも特徴だ。突然やって来た久美(松本若菜)に慌て、平井が店のカウンターに隠れて水を浴びてしまうシーンは、監督が「羊さんに水かけちゃうか!」とその場のノリで(!?)決断、数から水をぬぐうティッシュをもらう平井がもう一枚とせがむのも現場でのアドリブ。喪服を着た平井が悲しいはずなのに「マトリックス!」とおどけるシーンも当日の雑談から誕生したもの。きわめつけは平井がタイムスリップの際、ゴーグルと耳栓を用意しているのも、現場で監督やスタッフが「平井だったら用意してそうだよね」という雑談を吉田が聞きつけ自ら「よし!水中眼鏡だな!」と発案。塚原監督と吉田の信頼関係と、柔軟さ、瞬発力から数々の印象的なシーンが生まれた。「個人的には平井のパートで一番私は泣きました」と監督。「平井がタイムスリップした先で妹を見た最初のリアクションを見て、羊さんはちゃんと脚本を読んで自分の人生に組み込めている人なんだなと驚いたんです」。
    そして物語の最後にその存在の謎が明かされる石田ゆり子。セリフも少なく難しいキャラクターではあったが、実は最後に彼女が発するセリフは脚本になく、監督が石田に委ねたものだ。「あの一言は、彼女の人生観がすごく優しいんだなと思えるものでした。あえてドラマチックな一言ではなく、普通の言葉なんですけど、一番純粋な一言なんですよね。すごく好きなセリフです」(監督)。

  • 神秘的な水中シーンを経て、クランクアップ

    撮影後半にいよいよタイムスリップの瞬間=水中での撮影を敢行。この日はまだ4月上旬。水槽に溜まったたっぷりの水は、ある程度の水温を保つことは必至となった。スタッフは丁寧に水中のゴミを取り除きながら美しい光線を作り、専用のマシーンできめ細かな泡を作りだしていく。撮影当日、「実は水が苦手なんです」と衝撃の告白をした有村だったが、予想以上に冷たい水に驚きつつも、しっかりと水中シーンをこなす姿にスタッフ一同感心。続いて、吉田、波瑠、松重と順調に撮影。有村と吉田は水中に入ると浮き上がってしまう衣装のため、重りを入れ込んだ特注の衣装を用意。また長身の松重は飛び込んだ時の水しぶきが高くなるため、カメラ機材が濡れないよう急きょ水よけの装置を制作するなど、スタッフの臨機応変な対応も印象的だった。「音声さんもがんばってくれて、水がグルグル回っている効果音や、人によってドボンという深い音や、ポチャンという浅い音などいろいろ楽しい仕掛けもしてあります」(監督)。
    そして約1か月の撮影を経て、塚原組はついにクランクアップ。有村のラストカットは、平井の営むスナックで平井に赤いリップを塗られるという印象的なシーン。ここも脚本には全くないシーンだが、かつて親子役で共演したこともある2人の微笑ましいワンシーンとなり、監督も2人の姿を見て「かわいい!」と興奮気味だった。「決して妥協することのない監督とスタッフさんを見て、自分も一緒に戦っていきたいと思える現場でした。数の心の中の葛藤を表現する受け身の芝居は難しく、正解は分からなかったけど、監督からのOKが励みになりました」(有村)。

  • 主題歌はYUKIの書き下ろし楽曲

    物語に優しく寄り添う楽曲の数々は、これまで監督とは何回もタッグを組んでいる作曲家=横山克によるもの。「横山さんとは、お互いハッキリとものを言える関係性なので作業はとてもスムーズに進みました。今回は四季を意識してもらいつつ、横山さんの新たなファンタジックな世界観が出ている楽曲ばかり。彼は天才なので!」(監督)。

    そして鑑賞後のあたたかな余韻に大きく貢献する主題歌「トロイメライ」は、幅広い年齢層の女性達に圧倒的に支持を受け続けるYUKIの書き下ろし。唯一無二の歌声が、それぞれ人生を選択し懸命に生きる登場人物たちの背中を優しく押してくれる。

(文・遠藤薫)
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